高齢出産で二人目は?
二人目を産みたいけど、高齢出産になるというので慎重になる人は多いと思います。私は初産で超高齢出産でしたが、やはり二人目は欲しかったし私の周囲も夫を含め、私に二人目を期待する人は意外と多かったです。実際にその問題に直面した私が考えたことや、妊娠・出産で直面するであろう問題について整理したいと思います。
目次
高齢出産とは?
今さらですが、まず初めに高齢出産の正しい定義を確認しておきましょう。
晩婚・晩産が増えてきているので一人目の出産が高齢出産にあたらなくても、二人目が高齢出産になる人は多いと思います。一人目も二人目も高齢出産の場合には、考える問題が少し違う部分があるかもしれないので、そこの部分にも少し触れてみたいと思います。
二人目のタイムリミットは?
いったい何歳まで自分は妊娠出産できるのかと考えると思います。あるいは何歳までに出産したいと思う人もいるでしょう。こればかりは一律に何歳までと決められるものではありません。それゆえ悩ましいのかもしれませんね。
35歳からを高齢出産と呼び、妊娠しにくくなる・流産率の上昇、様々な異常率の上昇が問題視されています。そのリスクは35歳以降も上がり続けるのです。高齢出産するかしないかを考える場合には、このリスクと自分の年齢についてまず初めに認識し、それでも二人目を希望するかどうかから話が始まると思います。
女性の年齢と妊娠率
下のグラフは不妊治療をした際の妊娠率や流産率を年齢別に表したものです。
グラフの赤い線を見てください。これは胚移植後の妊娠率と年齢を示しています。若いうちは妊娠率は40%前後あるのですが、35歳頃から急に妊娠率が下がり、40歳以降の妊娠率の下降は加速します。不妊治療を行い、子宮内に胚移植してもこの妊娠率ですから、特に40歳以降での自然妊娠がいかに難しいかがわかります。
妊婦の年齢と自然流産率
下の表は妊婦の年齢と自然流産率を表したものです。
出典:内閣府「人口減少に歯止めをかけるために 目標のあり方 」国立成育医療研究センター 周産期・母性医療診療センター 齊藤英和
上表の通り、妊婦の年齢が上がるにつれて自然流産率は上がります。25-29歳の自然流産率が11%であるのに対し、35-39歳では20.7%、40歳以上になると41.3%にもなります。妊娠が難しい上に、せっかく妊娠しても流産の確立も高いのです。愕然としますが、これが現実です。
周産期死亡率と母の年齢
周産期とは妊娠22週から出生後7日未満までの期間をいいます。この期間の子どもの死亡率と母親の年齢との関係を表したグラフがあります。
出典:内閣府「人口減少に歯止めをかけるために 目標のあり方 」国立成育医療研究センター 周産期・母性医療診療センター 齊藤英和
周産期死亡率は母の年齢が35歳まではほぼ横這いといえるのですが、35歳以降になると徐々に上昇し始め40歳を超えると年々加速的に周産期死亡率が上昇します。40歳以降の妊娠と妊娠の継続が難しい上に、周産期も高齢出産だとリスクが非常に高いということですね。
妊産婦死亡率と年齢
次は妊産婦の年齢と死亡率の関係をグラフに表したものです。
出典:内閣府「人口減少に歯止めをかけるために 目標のあり方 」国立成育医療研究センター 周産期・母性医療診療センター 齊藤英和
上のグラフは、出産10万件に対する妊産婦の死亡件数を示したものです。若いうちの妊産婦の死亡例はそれほど高くはないけれど、40歳前後から増え始め、42歳から急増しています。出産は命がけとはいいますが、高齢出産・超高齢出産ともなれば、まさかの事態が現実味を帯びてくるといえます。
妊婦の年齢と妊娠高血圧症候群の発症頻度
妊娠高血圧症候群は以前「妊娠中毒症」と呼ばれていました。この発症頻度と妊婦の年齢の関係を表したのが次のグラフです。
出典:内閣府「人口減少に歯止めをかけるために 目標のあり方 」国立成育医療研究センター 周産期・母性医療診療センター 齊藤英和
妊娠高血圧症候群になると、母体と赤ちゃんにいろいろな障害を起こすことが多いのです。30歳を超えたあたりから徐々に発症頻度が上がり始め、40歳を超えると急激に上昇します。妊娠高血圧症候群が発症すると、母子の状態が悪くなるうえに悪化すると母体には血圧上昇、蛋白尿、けいれん発作、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害などが起き、赤ちゃんの発育が悪くなったり酸素が届かなくなり命を落とすこともあります。
妊婦の年齢と前置胎盤の発症頻度
次は妊婦の年齢と前置胎盤の発症頻度です。前置胎盤とは胎盤が正常よりも低い位置にあり、胎盤が子宮の出口(内子宮口)にかかっていたり覆っていたりする状態をいいます。
出典:内閣府「人口減少に歯止めをかけるために 目標のあり方 」国立成育医療研究センター 周産期・母性医療診療センター 齊藤英和
前置胎盤の発症率は、30歳前からじわりじわりと増えて年齢と共にリスクが高まることがわかります。前置胎盤と診断されると、原則帝王切開です。大量に出血する場合もあり、輸血にそなえて自分の血液を数回採ってストックしておくこともあるようです。
妊婦の年齢と子どもの染色体異常のリスク
次は妊婦の年齢と子どもの染色体異常のリスクについてです。
出典:内閣府「人口減少に歯止めをかけるために 目標のあり方 」国立成育医療研究センター 周産期・母性医療診療センター 齊藤英和
ダウン症については、多くの方が妊婦の年齢との関係を気にされていると思います。上のグラフで視覚的にそのリスクの高さを見てみるとよくわかります。たとえば30歳で妊娠出産する場合には、ダウン症の子どもが生まれる頻度は952人に1人です。それに対し、40歳で産むと106人に1人、40歳で産むと11人に1人です。
ダウン症も染色体異常の一つです。染色体の数や構造の異常によって、様々な種類があります。染色体異常そのものは病気ではないのですが、染色体異常を持って生まれることにより寿命が短かったり障害や疾患を引き起こします。もっとも生まれる以前に染色体異常により、自然流産してしまうこともあります。女性の年齢があがると自然流産率が上がるのは、このことも大いに関わっているでしょう。
高齢出産で二人目の問題
前置き的な内容が長かったですが、母体が高齢であるためのリスクを理解し覚悟したうえで、それでももう一人欲しいと思う場合に、どんな問題がありどう考えるかということを取り上げてみたいと思います。
なかなか二人目を妊娠できない
リスクを知り、それを承知し覚悟を決めて、二人目を望んだ場合であっても、現実問題として先にデータで示した通り、妊娠できる確率は非常に少ないです。
自分自身が二人目を望んでいて、努力している場合に落ち込むことはもちろん、家族や周りも妊娠の知らせを心待ちにしていくれている場合、プレッシャー・重圧も感じてしまいます。
あきらめかけの気持ちになっているときに「二人目はまだ?早い方がいいよ~」なんて悪気なくかけられる言葉にも、憤りを覚えます。「私の年齢を考えてみてよ!そんな簡単にできるわけないじゃない!!それにこの歳での妊娠がどれだけ危険なことかわかって言ってんの!」と言い返したい衝動にかられるかもしれません。
高齢出産をする本人と配偶者は、リスクも話し合い納得の上で二人目の妊娠に向けて進むのですが、当事者以外となるとそんなに真剣に考えていないのだと思います。漠然とリスクが高いという認識は持っていたとしても、一人目が高齢出産でいろいろあったとしても母子無事で出産できた場合には、また大丈夫だろうという根拠のない安心があるのかもしれません。
私の場合は一人目を42歳で妊娠したので、年子でもいいから早く二人目が欲しかったのですが、やはりそう簡単にはいきませんでした。結局私が50歳を超え、夫婦ともに二人目はあきらめましたが、嫌な言葉をかけられたときにはサラリと流すことに決めました。まあ、さすがに50歳になると二人目は?なんて言われなくなりましたが。
あなたの年齢を知らない人で子どもがまだ小さいのを見て、ひとりっ子だとさびしいから二人目をと声をかけられたら、サラリと流すか、しつこくその話題が続くようなら「二人目を望んでいるのだけど、私がもう〇歳でなかなか難しいんですよね」というのが手っ取り早いかもしれません。あなたの年齢を知らずに、あるいは若く見えるからそう言われているだけかもしれないので。
二人目の妊娠がわかったときの苦悩
42歳で産んだ私にも、周りからのプレッシャーはありました。「早い方がいい」「二人目はまだ?」と、何度言われたことか。そのため出産から1年ぐらいたって妊娠したときに、夫と話し合ってまだ2か月という段階で親に知らせることにしたのです。けれども結局はその後すぐに残念なお知らせをしなければなりませんでした。1か月しかお腹にいてくれなかったのです。
がっかりさせないためにも、安定期までは親に言わないほうがいいかもしれません。けれどももしも「二人目はまだ?」のプレッシャーが相当な場合には、すぐに知らせるのもアリかもしれません。私はその出来事以後、「二人目はまだ?」を言われなくなりました。
二人目を産んだとしても頼れる人がいないことも
二人目の出産のときには、上の子どもをどうするかが問題です。高齢出産になると帝王切開が多いので、退院後も思うように動けません。しばらくの間、自分ができない部分を誰がカバーしてくれるのか、考えなくてはなりません。
高齢出産の場合に、環境が若いときの出産と違うのは親が高齢になっているということです。親の年齢が80歳前後という人も多いでしょうし、頼ることは難しいでしょうね。
夫の仕事にもよりますが、我が家のように毎日夜遅く帰宅し、休日の出勤も多く、休暇も取りにくい仕事だと頼れません。まさに我が家はそういう問題にも直面していました。たとえ妊娠できて出産まで無事に過ごせたとしても、夫の仕事や両方の親の健康状態により、その後のサポートを身内に頼めない状態でした。
お金を出して家事サポートや上の子どもの保育園・幼稚園のお迎えなどをしてもらったとしても、その手配は誰がするのかを考えると、結構大変だしお金もかかります。
子育てが終わる自分の年齢
二人目を産むと、二人の子育てが終わるときの自分の年齢を考えてしまいます。40歳を超えて一人目を産んだとすると、一人目が成人したときにはもう還暦を超えています。晩婚化が子どもの時代も続いていたとすると、孫の世話ができない年齢になっているかもしれないし、孫の顔さえみることができないかもしれません。
先のことを考えすぎですが(笑)、子育ては長いですから自分の体力の事も考えておきたいところです。私の場合は40代半ばころから更年期になり、ちょうどその頃子どもは第一次反抗期を迎えました。毎日が地獄のようでした。50歳近くになると、病気がちになり健康に自信がなくなってきました。
高齢出産だった人は、必ず自分の老いと子育てがかぶります。場合によっては親の介護が重なることもあります。そういうことも視野に入れて、高齢出産のリスクを負ってでも二人目を希望するかも考えるとよいかもしれません。
気持ちが辛くなってきた時は
最後に二人目を望んでいたけれど、妊娠できずに気持ちが辛くなってきた時にどう考えるかについて、私の意見をまとめます。
二人目がなかなかできないとき
焦りますね。夫婦が共に同じ気持ちならまだよいのですが、妻だけが必死の場合、喧嘩の種になることもあるでしょう。私たちの場合は、不妊治療まではしないで自然に任せて授かればありがたいという気持ちでいたので、二人目を望んでいたといっても、真剣に考えている人からすれば考えていないに等しいと思われるかもしれません。
病院で不妊治療をする人もいると思います。高齢出産で不妊治療に通うと、いろいろ嫌な思いをすることもあるのではないでしょうか。私は経験したことがないので、気持ちを代弁することはできません。インターネットで調べてみると、世間の風当たりがきつそうだなという印象を受けました。けれども夫婦でよく考えて決めたことならば、周りの意見は気にせずに納得いくところまで進めばよいと思います。
二人目は欲しいけれど、不妊治療までは・・・と考える人もいるでしょう。私もそのうちの一人です。私たちがなぜ不妊治療をしなかったかというと、経済的理由がまずありますが、それがなかったとしてもハイリスクであることと、出産前後のサポートが得られそうになかったこと、私の健康上の理由で子育ての不安が大きかったからでした。医療の力を借りないで子どもを授かれたら、命がけで守っていこうと決めていました。もしも子どもに障害があったとしても、すべてを受け入れる覚悟をしていました。反対に妊娠できない結果に終わったら、それが私たち夫婦にとって一番いいということなんだと思うことにしました。
簡単ではないですけどね。こればかりはどうしようもなく、結果を受け入れるしかないということですね。今でも子どもに兄弟がいたらと思うことがあります。本当に今でもよく考えます。くよくよ考えても何も変わらないと気持ちを切り替えて、楽しいことを考えるしかありません。今目の前にいる子を全力で守り、愛するだけですね!
夫の変化
私たち夫婦の場合は、夫のほうが第2子を望む気持ちが強かったです。夫は私よりもずっと若いので、当然の思いかもしれません。事あるごとに高齢出産について考え、話し合ってきました。
そして遂に、夫の方から「第2子はあきらめた」と言うようになりました。その時はまだ私はあきらめていなくて、まだあきらめるのは早すぎると思っていました。夫があきらめた真意は母体への負担でした。さすがに50歳目前にして、妊娠出産を妻にさせるのは危険と思ったようです。
更年期に入ってから体調がすぐれず、何度も救急で病院に運ばれたり、持病もあり、更年期と育児ストレスによりイライラしていることが多いのを、近くで見ていたからでしょうか。夫は毎日夜遅くまで仕事に出ているし、休みも思うように取れない建設業。上の子はどうする?また帝王切開になることはわかっているし、しばらく動けない間家のことはどうする?と、問題山積み。親にも頼れない。上に1人子どもがいると、誰かが面倒をみなくてはなりません。一人目よりも自分も年をとっているし、大変だなと思いました。
夫婦で私が50歳になったらあきらめようと話していたので、50歳を過ぎてからは次第に二人目の話をしなくなりました。
自分の気持ちの持ち方
何歳になったらあきらめると決めたとしても、それでさっぱり気持ちの整理ができるわけではありません。でもやっぱり、そういう道を天が私にくださったのだと思うようにしています。
上の子はどんどん成長し、自分でできることが多くなり、行動範囲も広がります。今まではずっと付きっきりで、子どもが家にいたら自分の時間がなかったのですが、子どもの成長と共に自分の時間も増えてきます。
自分は今まで子どものために時間を使ってきたけれど、これからはもっと自分のために時間を使ったらいいと考えてはいかがでしょう。小さな目標を持つのは?やってみたいことに挑戦したら?外に出かけてみたら?ボランティアや地域の集まりに参加してみたら?セーブしていた仕事に少し比重をかけてもいいかもしれません。
妊娠出産に向いていた自分の意識を自分自身に向けてみると、二人目をあきらめきれなかった悔しい気持ちが軽くなると思います。他のことにも目を向けるということです。一つのことにこだわると、苦しくなります。世界は広い。価値観は多様。今まで見ていたものから目を少し離して、周りを、遠くを見てみてください。きっと楽しいことが見つかりますよ^^
今ある家族が大切。今を生きている子どもがいる。家族の中でお母さんが笑顔でいるということが、どれだけのパワーを発揮できるでしょう。お父さんも子どもも、お母さんの笑顔を見たら元気になります。家族のためにも一歩踏み出して、新しい世界を見つけましょう!
悔しかった思いや悲しかった思いを捨てたり忘れたりする必要はありません。そのまま心の中に置いておいて、前を見て新しい目標を持って生きるだけです。楽しいこと、希望に焦点を当てていると、辛かった記憶は消えたりはしないけれど、辛かった気持ちはずいぶん和らぐと思います。