読み聞かせを楽しむために
絵本は子どもだけのものだと思っていますか? 私は時々、英語の勉強法について相談を受けるのですが、そのときに英語の絵本を読むことをすすめています。大人に絵本をすすめたとき、「楽しそう!」という人と、「絵本なんか今さら読んでもね・・・」という人がいます。
「大人だからもう、絵本は卒業です」という考えはもったいないです。子どもがいたり、孫がいる世代の方にこそ、絵本の楽しさを知ってほしいです。読み手が楽しいと、聞き手の子どもはもっと楽しんでくれると思います。
目次
読み聞かせは義務じゃない
子育て中の大人が、子どもへの絵本の読み聞かせは「やらなくちゃ」「やるべき」「子どものため」などと思っていると、しつこく何度も読んでとせがまれたり、毎日毎日それが続く日には、疲れ果てて辛くなってしまいそうです。
毎日続いても、1日何冊、何回読んでも楽しめるのは、「好き」「楽しい」という気持ちがあるからこそではないでしょうか。好きな事なら、長時間していても苦にならないですよね。
「やらなくちゃ」から「やりたい」に気持ちを変えることができると、もっともっと子どもと絵本を楽しむことができます。世界を共有することができるのです。
読み聞かせをしてみよう
どんな風に読んでいいのかわからないのであれば、図書館などの「絵本の読み聞かせ会」へ行ってみましょう。そこで読み手がどのように絵本を読んでいるのか、子どもたちの反応などを見てみましょう。
はじめは見よう見まねでいいと思います。最初はとにかく、声に出して読むことに慣れることです。
声を出して読むぐらいのこと、大人なら誰でもできることなのでしょうが、そうでもないのです。まず、外で人がたくさんいる場所ででも(たとえば病院の待合室)、恥ずかしがったり緊張せずにいつも通りに読めること。子どもが理解できるスピードで読むこと。子どもの表情を見ながらすすめることなど、やってみるといろいろと考えることがあるのです。
それに慣れてくると、次は子どもが十分に楽しめるような読み方をしたくなります。声の大きさ、読むスピードは、絵本の初めから終わりまで同じでは物足りなくなります。変化が欲しくなります。
するとどこで盛り上げようか、どこで溜めようか、どこでリズムを早めようか遅くしようかなどと考え始めます。下読みできればいいのですが、いきなり初見でぶっつけ本番ということも多々あります。
ひらがなばかりだと、意外と読むのが難しいときがあることにも気がつくと思います。
何十冊、何百冊と声に出して読むうちに、自分の読み聞かせが上達していることもわかってくると思います。
自分の子どもや、もしかしたらたくさんの子どもの前で読み聞かせをする機会があるかもしれません。読みながら、子どもたちの反応を見るのも楽しみになってきます。そして次に違う絵本を手にしたときに、今度は子ども(達)にこの絵本をこんな風に読んでみよう、などと考えるとワクワクしてきます。
いろんな人の読み聞かせを見て学ぶ
読み聞かせが上手くできるようになるためには、できるだけ色んな人の読み聞かせを見るのがいいと思います。近くで行われている絵本の読み聞かせ会を覗いてみたり、絵本作家の読み聞かせなどにも行ってみたり、外出する余裕がなければYouTubeで絵本の読み聞かせを見てみるのもよいと思います。
けれど、できるだけライブで見ることをおすすめします。会場の雰囲気や声の通り方、聞き手の反応などを肌で感じることができるからです。
どこで読み聞かせ会があるの?
図書館では「おはなし会」という呼び方で、絵本の読み聞かせや手遊びなどの催しが開かれています。注意深く図書館の掲示物を見てみると、案内を見つけることができるはずです。わからなければ、図書館のカウンターで問い合わせてみてください。月に1回、図書館が開催していたり、場合によっては地域のボランティアグループがおはなし会を定期的に開いているかもしれません。
その他、書店や出版社が主催する絵本読み聞かせ会、おはなし会もあります。インターネットで検索しても見つけることができると思います。
お近くでおはなし会があるときには、ぜひお時間を見つけて覗いてみてください。思い切って地域の読み聞かせをしているボランティアグループに入ってみるのもいいですね。
表現することの楽しさ
「この絵本の読み方はこうでなければならない」ということはないと思います。始めたばかりの何もわからない時期は、見よう見まねでいいのです。ずっと続けていくうちに、色んな人の色んな絵本の読み聞かせを見るうちに、自然に自分らしい絵本の読み方というものができてくるはずです。
それは正しいということもないですし、間違いということもないのです。聞き手のこと、絵本の内容を考えて、自分の中で自然に出てきた表現で良いのだと思います。
絵本読み聞かせの基本を、以前教えていただきました。そこでは絵本は淡々と読み、できるだけ声色を変えないようにと言われました。理由は子どもの想像力を邪魔しないためとのこと。
方法論にとらわれすぎない
けれども私は、それにとらわれずに自由に読むほうを選びました。なぜなら自分の子どもや他の子ども達の反応を見ていて、そのほうが子どもたちが楽しそうに、じっとお話が終わるまで座って聞いていてくれるからです。
淡々と読むことは、一歩間違えてお経のようになってしまうと退屈なだけです。私が教わった読み聞かせの基本が、まさかお経のように読むべきという教えではないと思います。けれど「淡々と」の解釈を間違うと、極めて退屈な絵本の読み聞かせになってしまう可能性があります。
実際、私が読み聞かせの世界に足を踏み入れる前に聞いた、ある図書館司書さんの読み聞かせは、私の大好きな絵本であったにも関わらず淡々と読まれ、リズムに変化もなく、とても退屈で残念な読み方をされていました。読み方によって、こうも印象が変わってしまうのかということがわかりました。
あらすじやブックレビューがあり、数ページから全ページの試し読みも可能な1000万人の絵本ためしよみサイト|絵本ナビ。
年齢やジャンルや作家で検索できるので、無数にある絵本から気に入ったものを探すのにとても便利です。絵本に関する最新情報やイベント情報、作家さんへのインタービューなど、様々な楽しい情報を見ることができます。
子どもの想像力を邪魔しないとは?
正しい読み方?
絵本を読み聞かせるときに、子どもの想像力を邪魔しないよう大げさな表現、身振り手振りは止めましょうということが言われています。
それはそうだと思うのですが、私はあまり気にしないほうが良いと思っています。役者じゃないのだから、多少大げさにしても大したことではない、特に日本人だし(笑)とも思います。
それよりもきれいにスラスラと読むほうが、子どもにとっては苦痛ではないかと思います。邪悪な存在が出てきたら、邪悪な声を使ったらいいし、天使が出てきたら、天使の声を使ったらいいと思います。
泣きながら登場人物がセリフを言ったら、泣いている声で言ったらいいし、怒っていたら声を荒げて読めばいいと思います。そうするとまず、読み手が楽しいです。すると聞き手も楽しいと感じます。
子どもの想像力はタフ
持論ですが、大人が絵本で多少声色を使ったからと言って、そんなことで邪魔されるほど、子どもの想像力は軟ではないと思います。それよりも絵本に興味を失くす、読み聞かせは退屈だと思われる事態に陥るほうが深刻です。
それに感情表現は一つではないので、いろんな表現を子どもが見ることも必要かなと思います。
正しい読み方よりも、楽しい読み方
なぜそういう思いに至ったかと言うと、とても面白い絵本の読み聞かせをする人はみな、大胆な表現をしていたからです。子どもたちも大人たちも本当に楽しそうで、会場が湧くのです。ぐっとみんなの意識を引き付けるのです。
ある絵本作家の読み聞かせを聞きました。その作家さんは、絵本をじっと固定していませんでした。動き回るし、印刷された言葉通りに読むのではなく*、作家さん自身の方言に変えて読んだりしていました。途中で中断して、子どもに質問を投げかけたりもしていました。
*:言葉を変えたり飛ばして読むことに関しては、著作権法のからみがあるので、注意は必要です。
このような読み方は、「絵本の読み聞かせの基本」から、ことごとく外れていますが、私はこの読み方が正しいか正しくないかを議論する必要などないと思います。この作家さんは駆け出しの頃、数組の家族の前で読み聞かせをしたら、途中でみんな帰っちゃったそうです。でも今は売れっ子作家さんですよ。昔の読み聞かせのスタイルを知らないのですが、おそらく今のほうが派手な方向でバージョンアップされていることでしょう。
大人の思惑どおりにはいかないのが子ども
何のために絵本を読みますか?子どもにきちんと絵を見せて、書かれた言葉通りに読んで聞かせて、何かを感じてほしいからですか?そして想像力を育てて欲しいからですか?
子どもはそんな大人の思惑通りに行くでしょうか?要は読み手の大人も聞き手の子どもたちも楽しんで、時を共有し、記憶を共有すればよくないですか?
子どもたちはいずれ、自分で本を読み始めます。それまでの間、本って楽しいな、大好きなおうちの人と一緒に笑ったなというような、良い記憶をたくさん残してあげたらそれで良いのではないでしょうか。
「大人が絵本を読み始めると、じっとして最後まで聞いていなくちゃいけないんだ」という記憶を子どもに植え付けないことが、第一だと思います。
だから読み手も聞き手も一緒に楽しめる読み方をすれば、もうそれで十分だと思います。上手に読む必要なんてないです。読み手が心を開いて、感じたままに表現してみると、大人にとっても絵本はなかなか楽しいですよ。
大前提として、聞き手がわかるような表現というのは忘れてはいけませんね。独りよがりにならないこと。読んでいるときには、聞き手の反応をよく見て、臨機応変に対応したいです。