セルライト化粧品の効果 2. 肌への浸透性

スポンサーリンク
koureimama336x280

目次

化粧品効果の有無について、核心にせまる

化粧品とは何かについて、前回の記事セルライト化粧品の効果 1. 落とし穴に注意にまとめました。次は実際のところ、化粧品を塗布すると成分は肌に入るんかい?という話。ここんとこ、知りたいですよね。

肌のバリア機能をちゃんとわかろう

肌のバリア機能ってご存知ですか?美容に関心のある方なら、ご存知だと思います。肌のバリア機能とは、外界の物質が体内に容易に入ってこないようにバリアしてくれる機能です。同時に、身体の中の必要な物を出さないようにもしています。

もしも皮膚が身体の外にある様々な物質を簡単に体内に入れてしまうとしたら、どうなると思いますか?具体的にわかりやすいものを挙げると、ホコリや病原菌などです。病気になっちゃいますよね。

また、私達の身体は、ほとんどが水で出来ていると聞いたことがありますよね。皮膚にバリア機能がなければ、身体の中の水がじゃんじゃん蒸発していってしまいます。

ではバリア機能というのは、どのような構造で外界と身体の中の物質が簡単に行き来できないようになっているのでしょう。

それは簡単にいうと、油の膜を作っているからです。皮膚表面だけではなく、皮膚の細胞と細胞の間にも油と水の層(ラメラ構造)で満たされていて、しっかりと身体の中と外を分けているのです。皮膚(角質層)の構造をレンガのブロックで作られた壁に例えることがあります。レンガブロックは細胞で、レンガ同士をくっつける接着剤が、細胞間脂質(前述の水と油の層)というイメージです。

どんなものが肌バリアを通過するのか

さて、この肌のバリアを通過するためには何が必要なのでしょうか。バリアを通過するとは、角質細胞と角質細胞の間を埋めている細胞間脂質を通り抜けるということです。細胞間脂質は油と水の層で出来ていると説明しました。ラメラ構造といって、油と水の層が交互に重なっている構造です。ここを通り抜けやすい物質は、油にも水にも馴染む物質です。油にも水にも馴染む性質のことを両親媒性といいます。

下図は角質層にある細胞間脂質のラメラ構造のイメージ図です。

出典:角層の細胞間脂質 | 花王スキンケアナビ

肌バリアを通過できるサイズ

さらにバリア機能とは別に、肌に入るサイズというのも考えなくてはなりませんね。肌の奥に入っていくためには、角質細胞と角質細胞の間の隙間を通ることができるサイズでなくてはなりません。だから、そのサイズよりも大きな粒は、いくら油と馴染んでも肌の中には入っていけないのです。

通常、細胞はμ(マイクロ*)という単位の長さで表されます。肌を浸透するサイズはn(ナノ*)レベルと言われています。まだ私が化粧品業界にいた2004年か2005年あたりから、化粧品のナノテクが話題になり始めていたと記憶しています。このナノテクの「ナノ」とは、今説明しているナノレベルのサイズのことです。化粧品の成分をナノレベルに分断する技術をナノテクノロジー(ナノテク)と呼んでいます。ナノテクを使用する目的は、角質層からさらに奥にある真皮層、さらにその奥まで化粧品成分を浸透させるためです。

*:マイクロやナノは、長さや重さを表すときに使われます。次のような関係です。
1m(メートル)=1,000mm(ミリメートル)
1mm=1,000μm(マイクロメートル)
1μm=1,000nm(ナノメートル)
1nmのものが100万個集まると、1mmになるということですね。100万個という時点で、もう私には想像不可能です。

これまでの事柄をまとめましょう。角質細胞と角質細胞の間、つまり細胞間脂質の中を通過するためには、成分の粒子径だけが問題ではありません。細胞間脂質は油と水でラメラ構造を作っています。したがって、水と油の両方ともに親和性があるもので、かつ粒子径がナノレベルのものが通過しやすいことになります。

分子量とサイズ

もう少し詳しい説明をします。今までサイズの話をしてきましたが、分子量とはどう違うのでしょうか。

もしかしたら「え?ちょっと待って!分子量の大きな物質は肌に浸透しないっていうけど、分子量と今話題にしている大きさとはどう違うの?」という疑問があるかもしれないので、整理したいと思います。

分子量というときは、重さを話題にしています。通常、分子量が大きい(重たい)と分子のサイズも大きくなります。しかし同じ分子量でも、紐のように伸びた形をしているのか、球のような形をしているのかで、サイズは変わってきます。脂溶性の物質が水に溶けている状態にあるときにはミセルを形成しますので、同じく肌の浸透性を考えるときには脂溶性物質の分子サイズではなく、ミセルのサイズを考えなくてはなりません。

下図はミセルのイメージ図です。界面活性剤などの両親媒性物質が作るミセルの中に脂溶性の物質を閉じ込めると、水に溶かすことができます。

出典:Encyclopædia Britannica – Micelle

ナノテク 肌への浸透性と安全性

ナノテクノロジーを使うと、これまで肌への浸透は不可能と言われていた大きな分子量をもつコラーゲンなども、ナノサイズに分断して真皮層までも届けることが可能と考えられています。(もっとも、コラーゲンを分断したらコラーゲンではなくなりアミノ酸になっていますが。この辺りの詳しい話はまたいずれ。)セルライトをなくす、減らすために有効と考えられている化粧品成分を、皮下組織にまで浸透させて作用させることも可能と考えられます。すばらしいですね。ナノテクノロジーは、化粧品業界だけではなくあらゆる分野で注目・期待されているテクノロジーなのです。

化粧品ユーザーとしては喜ばしい反面、ナノテクは新しい技術であり、未知の部分が多すぎるために、安全性に対して懸念する声が上がっているのも確かです。ナノテクが議論され始めた2004年頃から2017年の現在も継続して、ナノ粒子の安全性についてそれなりの議論や研究発表が行われてはいるようです。しかし期待の大きいテクノロジーであるがゆえに、規制をかける方向での動きが活発といえないところが一消費者としては不安を禁じ得ません。いつの時代もありますね・・・こういうこと。

ナノマテリアルに対する規制

検索によって得た情報によると、国際動向として2009年にEUで新化粧品規則が公布され(2013年7月施行)、ナノマテリアル(ナノ材料)の定義や届出、安全性評価などがカバーされているようです。この規則に定義されているナノマテリアルにあたる成分を含有する化粧品には、当該成分に(nano <ナノ>)と記すことが定められています。

現状として、日本の化粧品メーカーではナノテクを使っている化粧品は存在していますが、厚生労働省のホームページには、EUの動きに同調する形で日本でナノ材料の使用に関する規則が作られた、あるいは今後作られるという具体的な情報は見当たりませんでした。(2017年5月18日現在)

参考までに、厚生労働省のホーム―ページに掲載されている「化粧品のナノテクノロジーに関するICCRアドホックワーキンググループの報告」をリンクしておきます。

日本化粧品連合会のホームページにも、ナノマテリアルの安全性に関する情報が提供されています。基本的な姿勢としては、ナノマテリアルを化粧品に使用することによる健康被害は現在のところないというものですが、危険性を指摘する意見があるために、安全性に関する情報を公開しているようです。詳細はナノマテリアルについて | 日本化粧品工業連合会をご覧ください。

なぜ危険?ナノマテリアル

健康被害を懸念する声があがっている理由は、第一にナノサイズという極めて細かな粒ですから、身体の中に取り込まれやすいということ。第二にナノ化することにより物質の特性が変わることがあるために、体内に取り込まれたときの危険性は未知数であるということです。化粧品を使う側の私たちは、全く何も知らないというのではなく、危険性があるということだけでも知っておくことは必要かなと思います。

物質の特性が変わる例をあげると、酸化チタンをナノ化して日焼け止めに配合することで、使用感が抜群に良くなります。ナノテク以前の酸化チタン入り日焼け止めは、使用感が重くべたつきがあり白浮きしていましたが、ナノ化した酸化チタンを配合することにより、乳液のようなさらっと軽い使用感になり、白浮きもしません。

使用感が軽くて白浮きしない日焼け止めは嬉しいですが、一方でナノ化された酸化チタンが体内に取り込まれたら何が起きるのかという心配がされているようです。実際どうなるのかということまでは、何ともいえません。科学的に納得できるデータがありません(というか、見つけられません)。さまざまな怖い憶測や学者が発表した論文に危険性が指摘されているなど、まことしやかに「これは害である」という情報がネット上に飛んでいるようですが、それらの情報を真に受けてよいかは実のところ、私にはわかりません。

日本化粧品工業連合会は、前述の通り酸化チタンも含めたナノマテリアルに関して、健康被害はこれまでのところ報告なしという立場ですが、過去に使用を許されていた原料が発がん性があるなどの理由で、使用中止とされるケースがありました。ナノテクノロジーの危険性については、世界中で議論され関心の高い問題であることも踏まえると、少なくとも成分表示にナノ表示をして、消費者へ選択の機会を与えることはしてもよいのではないかと思います。

クチコミと効果は別物

私達消費者が化粧品メーカーや販売店が提供する情報以外で得られる情報のほとんどは、クチコミです。実際に使った人の感想ですね。それらが嘘とはいいません。実際に化粧品を使って、好ましい変化が得られてハッピーな人も確かにいるはずです。でもそれは化粧品だけの効果なのか、その他の要因があるのかは不明です。

クチコミはそのようなものであることを理解した上で、化粧品選びをしなくてはなりません。なんだか夢を奪ってしまうようなことを書いてしまいましたが、現実をきちんと認識した上で夢のある話をしましょう。次回はスリミング剤、セルライト用化粧品の正しい使い方についてです。

スポンサーリンク
koureimama336x280

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
koureimama336x280