生と食と子育てから考える「生きるってどういうこと?」

2017年10月7日(土)に「生きることは、食べること」をテーマにした、助産師 内田美智子さんの講演を聞きに行きました。「生」の反対の言葉は?生きるとは?生と食の関係、子どもの心と体の問題と家庭の役割について、深く考えることができました。

目次

数年越しの願いが叶った講演会

みやこ町総合文化センター サン・グレートみやこにて、助産師 内田美智子さんの講演会がありました。みやこ町読書週間関連事業として行われました。私は知人に紹介してもらい、この講演会を知りました。内田さんの著書を別ブログで何冊かレビューを書いたのですが、その頃から講演会があったら行きたいと思っていました。やっと数年越しの願いが叶いました。

2017.10.14追記として、本のレビュー記事を下記に紹介しておきます。

命の物語 その1

命の物語 その2

テーマは「生きることは、食べること」でした。内田さんは助産師なので、妊娠・出産に関してはプロですが、食育に関するプロではないと前置きがありました。ただ関連性はあって、生まれてきた子どもたちの行く末を案じた時に、心身ともに健やかに成長するためには、食事が大切です。

出産して「はい終わり」ではなく、命の始まりからその後も関心を持たれているからこその食育に関する講演だったのだと思います。とてもためになる講演会だったので、以下その内容を私なりに整理したいと思います。

育児と食事と生きる力

出産は生を産みだす大仕事です。生まれた命を母親は必死で育てていくのです。講演の中で講師の内田さんは「出産は命がけだけれど、子育ても命がけ」とおっしゃいました。はっとした瞬間でした。確かに出産は命がけ。これは容易にわかることなのですが、子育ては長期間に及ぶため、「命がけで子育てする」という意識は普通、育児その他諸々の忙しさで薄らいでいると思います。

たくさんの赤ちゃん~思春期の子どもたち、そしてお母さんたちを見てこられて、「食べさせられていない子ども」と「未熟な親」が多いと感じているそうです。

「食べさせられていない」という中には、本当に食べ物を食べさせてもらっていないことはもちろんのこと、食べているけれど栄養が足りていない、あるいは愛情が足りていない(心が満たされていない)子どもも含みます。

人は食べて栄養を摂らなければ生きられません。食べ物だけではなく、家庭には愛情もなくてはならないでしょう。

「生」の反対の言葉は何?

「生」の反対の言葉は何だと思いますか?と私たち聴講者に問いかけました。「死」?いや、違う気がする。答えは「生まれないこと」。妊娠したお母さんは、子どもを産む選択をしたから子どもは生まれて、今そこに存在します。産まない選択をしなかったのですね。お母さんは命をかけて子どもを産みました。

日本には「母体保護法」があり、14条の要件を満たす場合には22週までに中絶することができます。現在年間でおよそ20万件もの中絶件数があるそうです。

命をかけて産んだのに、思春期になると子どもが荒れる。子どもの声に耳を傾けると共通して多く聞かれるのが「親は自分のことなんか気にしてない」という言葉だそうです。どうしてそうなってしまうのでしょう。

講演の中で内田さんは、子どもへ伝えるメッセージは「命が大事」ではなく、「あなたが大事」であるべきだとお話されていました。

食で心と体を満たそう

今、親元を離れて一人暮らしをする大学生のうち、60万人が自炊できないそうです。割合で見るとどれぐらいなんだろうと思い、独自に調べてみました。

統計データの数年違うのですが、ざっくりと出してみました。

  • 2012年の大学生総数 280万人
  • 2014年の大学生下宿など 大学生総数の40%

以上から2014年の大学生で下宿などをしている数は112万人ほどです。講演では自炊できない大学生が60万人ということだったので、二人に一人は自炊ができないことになりますね。これって、「自炊しない」ではなく「自炊できない」ですからね。自炊できない人がとても多いですね。

ところで心がひもじい子どもは、食・睡眠・愛情・居場所が足りていないらしいです。夏休み明けに子どもが自殺するというニュースを目にするようになりました。そういう子もいるけれど、逆に早く夏休みが終わってほしいと思う子どももいるそうです。

家にいても食べ物がない、居場所がないというのです。カップ麺や買ったお弁当を「あんなの飯じゃねえし」と言うそうです。それって、子どもはちゃんとおうちの人に愛情をこめて作ってもらいたいから出て来る言葉ではありませんか。私は無関心に食べるより、まだしっかりした感性を持っているんだなと感じました。

もちろん買って来たお弁当やお惣菜は絶対にダメということではなく、子どもへの差し出し方次第で、子どもに「あなたのことを気にしていますよ」というサインを出すことはできるという話も聞きました。

例えば仕事で遅くなり、ご飯の支度ができなかったのでお弁当を買って来たときには、子どもの分だけでもお茶碗やお皿に入れ替えて出してあげるとよいそうです。その際、ご飯はその子が食べられる分量だけ入れて、おかずに何か簡単でもいいから、子どもが好きなもので手をかけたものを1品添えることも、手作り感や愛情を子どもに伝える方法になるということでした。

また、大人用の大きな唐揚げなどは、子どもが食べやすい大きさに切ってあげることも、とても大事だそうです。そもそもご飯の量を調節したり、大きなお肉類を小さく切るなどは、いつもその子を気にかけていなければわからないことです。そういう小さな一つ一つの親の行動を、子どもは親からの「サイン」として日々受け取っているのですね。

買って来たお弁当を子どもに差し出して、「食べられるだけ食べなさい」というよりも、ずっと心が満たされる気がします。

子育て四訓

私は初めて知ったのですが、子育て四訓がなるほどと思ったので紹介します。

乳児はしっかり肌を離すな
幼児は肌を離せ手を離すな
少年は手を離せ目を離すな
青年は目を離せ心を離すな

思春期の反抗期は突然やってくるのではないのだそうです。肌→手→目→心の順に、ゆっくりと親と子が離れていくのが理想ですが、肌も手も目もなく、思春期になっていきなり心寄り添っても「うるせー!」となるのは仕方がないという話を聞いた時は、納得でした。

食品添加物の話

食の話と切っても切れない関係の食添(食品添加物)。このようなお話を聞きました。「薬を飲むときには、副作用などの説明を聞いたり文書を読んだりして、多くの人は気にしているのに、なぜ食添は気にしないの?」

食添は現在認められている数は1,400種類にもなるそうです。今や加工食品に食添が入っていないなんてありえませんよね。これは消費者にも責任の一端があります。添加物が入って日持ちのするものや、本物の高価な原材料の代わりに食添を使った安い食品を買うから、スーパーではどんどん食添入りの食品を置くようにするというループを作り出しています。

とはいえ、講師の内田さんは食添を100%避ける生活などは無理なのだから、できるだけ必要のないものは摂らないように、工夫すべきとのことでした。私もこの点については同感で、そもそも食添から逃れる生活を極めるとヘンテコリンな生活になってしまいます。度が過ぎると周りの人も迷惑ですよね。

一つの提案として、毎日使う調味料だけは本物を使うことを話されていました。購入前にラベルを見て買う習慣を身に付けるといいなと思いました。

その他、砂糖の摂りすぎに注意してという話がありました。砂糖は依存性があるとか、砂糖中毒なんて言われますよね。特に清涼飲料水には大量の砂糖が入っているので、常飲はしないほうがいいですね。スポーツ飲料も良くないとおっしゃっていました。理由は砂糖がたくさん入っているからです。脱水症状の緩和にはスポーツ飲料ではなく経口補水液を使うことをおすすめされていました。

生きるとは

この講演のテーマであり、誰もが考えたことのある「生きるとは」何か。この講演の最後のほうに、以下のような言葉で「生きるとは」について語られました。

生きるとは

大人も子どもも

  • 気にしてもらいたい
  • 誰かにそばにいてもらいたい
  • 褒められたい
  • 認められたい
  • 役に立ちたい
  • 誰かが喜んでくれることが嬉しい

こと。

この言葉を見てわかるように、人は一人では生きていけません。人が生きるということは、自分の傍に誰かがいてくれてこそできることなのですね。これらすべてが満たされると、生きる力が湧いてくるでしょう。

講演を聞いた感想

良く生きるためには、食べ物・物・住む所が与えられさえすればよいわけではないことがわかりました。身近にいて自分のことを思い、気にかけてもらい、自分もまた誰かの傍にいてその人の役に立って・・・そういうことができる最小単位が家族です。だから生きるためには家族のあり方が大事なことであり、子育てがその中心となっているのだと思いました。

子育てに大事なことは「あなたが大事、あなたのことが何を差しおいても大事」というメッセージを子どもに送り続けること、そして子どもが安心して暮らせる家庭を守ることが大事だと思いました。

親に課せられた子育てのゴールについて、内田さんがおっしゃったことは、私も同感です。それは「親から離れて自分で生きていくことができる子どもを残す」ことです。

順当にいくと親から先に死にます。子どもが成長して独り立ちした時に、ちゃんと生きていける人間を育てなくては、死んでも死に切れませんよね。育児は自立した人間を世に残すという、大事な社会的任務とも言えそうです。

何ができるできないということよりも、上手く社会の一員として受け入れてもらえるよう、愛情のある子育ては必須だと思いました。

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